鍼灸で体を刺激すると、内因性オピオイド(モルヒネのような役割をもったホルモン)が放出されます。この物質が痛みを抑え、痛みを脳に伝える神経経路をブロック。脳と脊髄からの痛み抑制のダブルブロックで、痛みを緩和します。
血行を促進し、痛みの原因となる物質を老廃物として流してくれます。
痛みに対する効果だけでなく、自律神経が支配する胃腸などの内臓や血圧などにも作用して、機能を調整しバランスを整えてくれます。最近の研究では、免疫系や内分泌系への効果も期待されて、さまざまな研究が進んでいます。鍼灸による免疫力の向上・アンチエイジングなど、より幅広い効果が期待されています。
同じ病名で同じ症状を訴えても、一人ひとり体質が異なります。鍼灸師が患者さんを診るときは治療方法が異なることもあります。生きている人間ですからまさに十人十色。同じ病人はいないのです。
鍼灸師は、精神的な面や体質をも考慮しながら、その人に最も適した治療を行います。
鍼にはハリ麻酔のような鎮痛作用や自律神経の調整による内臓の活性化・免疫作用を高めるなど、病気から身体を守る数々の効果があります。
鍼治療では、通常直径0.12mm ~ 0.18mm 程度の極めて細いステンレス製の鍼をツボに刺入します。刺入するときは管鍼法という日本で発明された方法で主に行われています。これは殆んど無痛に近い方法です。
鍼の刺激は脊髄から大脳皮質に伝わり、神経・血管・リンパ系を介して痛みなどを調整し、身体を安定した状態に改善していきます(エンドルフィン効果・抗ヒスタミン効果など)。また、鍼刺激により血液循環を良くし、痛みを起こさせる物質(ヒスタミン・ブラディキニン類等)の局所濃度を低下させ、栄養分に富む新鮮な血液を供給することにより、痛みを和らげる作用もあります。
(一社)長野県針灸師会ではディスポーザブル鍼を推奨しております。使い捨てなので、他の人から感染することはありません。
また、講習を受け、一定の基準を満たした鍼灸院を安全基準鍼灸院として認める「安全基準鍼灸院制度」を設けています。
一般的に「やいと、お灸」と呼ばれているのが、艾(もぐさ)を用いてツボに熱刺激を加える方法です。もぐさは、よもぎの葉を乾燥させ、葉の裏側の部分だけを集めたものです。小さな火傷をつくることで、ヒストトキシンという生体の機能を改善する物質が産生されます。
大きなもぐさを乗せて、熱さを我慢するというイメージを持っているかもしれませんが、全く違います。もぐさを皮膚に直接乗せる直接灸の場合、もぐさの大きさは糸状から半米粒ほどが主流で、病状に応じて熱刺激を与えます。直接灸をした後は、少し痕が残ったりすることがありますが、たいてい1~2週間で治ります。
間接灸はもぐさと皮膚の間に空間を作ったり、味噌や薄く切ったしょうが・にんにくなど、熱の緩衝材になるものを入れたりして熱さを和らげていますので、比較的気持ちがよいものです。
この他に灸頭鍼といって、刺入した鍼にそら豆ほどの大きさのもぐさを取り付けて点火する方法や、遠赤外線やレーザー光線を使用する方法もあります。
また、灸は自宅でも行えるよう、鍼灸師が指導します。
患者さんの要望に応じて治療いたしますので、遠慮なくご相談ください。
鍼灸といえば、肩こりや腰痛を連想する人が多いかもしれません。確かに鍼灸を受ける人の多くの症状は、首・肩・腰・ひざなどの疾患に伴う痛みです。しかし、実は、運動器系の痛みだけでなく、消化器系疾患・呼吸器系疾患・循環器系疾患から小児疾患など、さまざまな症状に効果があるといわれています。
家事や仕事のストレスに加えて、パソコン使用による眼性疲労や長時間同じ姿勢をしているためによる疲労など、環境疲労やストレスがさまざまな症状を引き起こしています。
何となく身体がだるい・寝つきや寝起きが悪い・ぐっすり寝た感じがしない・食欲がないなど原因がはっきりしない症状でお悩みではありませんか?そういう身体の不具合を整えて元気を取り戻すのも、鍼灸の得意とするところです。
病気を予防する、病気にならない身体を作る、それこそこれからの社会が求める医療です。
鍼灸は新たな医療として、大きな可能性を秘めています。
★運動器系疾患
肩こり、五十肩、腰痛、頸椎症、変形性膝関節症、腱鞘炎、テニス肘etc.
★消化器・呼吸器系疾患
便秘、下痢、痔疾、慢性胃炎、食欲不振、気管支喘息、鼻炎、感冒、扁桃炎etc.
★疼痛性疾患
頭痛、坐骨神経痛、術後疼痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛etc.
★循環器系疾患
低血圧症に伴う諸症状、冷え性、本態性高血圧症etc.
★泌尿器&産婦人科系疾患
月経異常、更年期障害、逆子、不妊、インポテンス、失禁症etc.
★感覚器系疾患
仮性近視、眼性疲労、メニエール病、耳なり、難聴etc.
★小児疾患
夜尿症、小児神経症、消化不良etc.
★その他
不眠症、肥満、自律神経失調症、片麻痺、顔面神経麻痺、アレルギー疾患etc.
鍼灸治療は、野球・サッカー・テニス・ラグビー・バレーボール等の球技や相撲・柔道等スポーツ全般の治療に大活躍しています。鍼灸は血液循環を良好にし、新陳代謝を促進するなど疲労回復に大きな力を発揮することから、練習の疲労を取り除き、故障やケガの予防、試合前の調整、精神の安定を図るなど練習や試合に万全の体制で臨めるよう役立っています。
(一社)長野県針灸師会では、鍼灸医療ボランティアとして長野五輪でも多くの選手などに治療を施し、大変喜ばれました。
鍼灸治療は痛みに効くことはよく知られていますが、高血圧症・心臓病・肝臓病などの生活習慣病に効果があることは一般にあまり知られていないようです。しかし、鍼灸には免疫機構に働きかけたり、内分泌や自律神経の調整、精神の安定を図る等々の効果が学会や有名な医療研究機関で証明されています。これらの鍼灸の効果を大いに活用して、生活習慣病を克服し健やかな生活を送って頂きたいと考えています。
近年、アトピー性皮膚炎で悩んでいる方が、子どもだけでなく大人にまで増えてきていますが、まだ原因は明確には解明されていません。従って、治療方法も様々な面からアプローチされており、NHKの番組『クローズアップ現代』では鍼灸治療もアトピー性皮膚炎に対して有効であることが紹介されました。
子どもに対する鍼灸は、昔から「チリゲの灸」や「虫ばり」の名で一般に親しまれています。小児鍼が効くのは、鍼による皮膚刺激が自律神経を介して脊髄や脳、さらに各臓器へと伝わり、内臓の働きを活性化させ、体液を安定させて抵抗力のある身体づくりを促進させるからです。
肌荒れやくすみ・小じわ・クマ・むくみなどは何らかのトラブルのシグナルでもあります。鍼灸治療によって、内臓や全身的なトラブルが改善されることで、肌トラブルが解消することもあります。きっかけは美容でも、“目の疲れ”とか“首のコリ”等がとれるのが、鍼灸の強みです。東洋医学では身体全体を診てトラブルの原因を把握し、バランスを健康な状態に戻すからです。
女性ならではの生理痛や月経前症候群で悩んでいる場合にも、鍼灸で悪循環を立ち切ることで、人生が大きく変わるケースさえあります。
(一社)長野県針灸師会は、信州大学医学部のご協力を得て学術講習会を毎年開催し、解剖生理学から免疫学、また小児科・皮膚科・婦人科など様々な専門分野の学習を重ねています。
ツボを刺激し身体のバランスを整える治療法ですので、副作用は殆んどありません。子どもから御高齢の方まで、安心して治療を受けていただけます。
治療に用いる鍼は、通常0.12mm~0.18mm程度の細さ(平成24年現在、最細の注射針は0.20mmです)で、裁縫や注射の針とは異なり痛みをできるだけおこさないような形状になっています。
また、大半の鍼灸院が消毒滅菌されていて一回ごとに廃棄されるディスポーザブル鍼を使用しています。
鍼灸治療は身体の免疫力や自然治癒力を高めていく治療法ですので、副作用がなく投薬による治療ができない妊娠中の女性にも適しています。鍼灸によって”つわり”が緩和されたり、流産癖のある人が無事に出産したり、また、逆子が治ったという例もあります。ただし、妊娠していることは治療を受ける前に必ず申告してください。
疾病によっては、投薬と鍼灸との併用によってより高い効果を望める場合もあり、欧米ではそれが標準的な考え方になりつつあります。日本でも積極的に併用治療を推奨している医師も多数いますので相談してみてください。
ストレスから来るさまざまな症状の改善に、鍼灸は大変有効であるといわれています。また、更年期障害に伴う自律神経失調症や不定愁訴(めまいや動悸、肩こり、腰痛など)を治める手段として、鍼灸はもっとも適している治療法の一つです。うつ病に関しては、心療内科などの西洋医学との併用治療がより有効とされます。
痩せるツボとして一般的によく知られているのは耳です。鍼による通電や、皮内鍼という鍼による刺激を耳の胃点、肺点に加えると食欲を抑制して体重減少や代謝異常を改善させる可能性が推測された、という報告などもあります。
しかし、ダイエットを成功させる上で一番大切なことは、正しい生活習慣を継続することで、鍼によるツボへの刺激は、そのきっかけと考えましょう。
我が国で鍼灸治療を行うには、はり師・きゅう師の国家資格が必要です。(一社)長野県針灸師会は、その国家資格を所有する者の団体です。
本会では「スポーツ鍼灸師制度」や「安全基準鍼灸院制度」などを全国に先駆けて制定し、各専門領域の研修をしています。
他にも「老年医学」・「婦人科医学」など、様々な分野にわたり研修しています。
本会会員は常に専門の教育を受けていますので、”かかりつけ鍼灸院”として安心してご相談ください。